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2018年8月21日 (火)

怪談話。

ふと、思い出した話。

もう、20年以上前。私は父の経営する製版会社で働いていた。
とある夏の週末、社長(父)と福岡へ出張に行った。
用事は土曜日だけで終わったため、社長は日帰りで帰り、私は折角なので一泊して翌日曜日に帰ることにした。

社長と別れ、一人になった。さて、どうしよう。
一泊するといっても、私の財布には帰りの新幹線のチケットと2~3000円程しか入っていない。
ホテルで宿泊などとはもとより考えていない。私は“ノジュカーズ”だから大丈夫なのである。
初めての地で土地勘もなかったが、適当に電車に乗り、窓から外を眺める。
ほどなく、海が見えた。なかなか良さそうである。
とても暑かったので泳ぎたかったのと、一晩過ごすための“野宿処”を決めておきたかった。

下車して海へ。10mほどの狭い砂浜。何隻か小さな漁船。誰もいない。気に入った。
早速パンツ一丁になって海へ。海は海藻が多かったが、水は綺麗だった。
クラゲに刺されながら、海水浴を楽しんだ。

やがて日が暮れた。月明かりでぼんやり海が見える。
波の音。独り。私は至福を味わっていた。
本当を言うと、小さな焚き火でもこしらえれば言うことなしなのだが、人目につくのはよろしくない。
浜辺の端に腰を掛けて、持ち歩いていた小さな懐中電灯の灯りで単行本を読んでいた。

突然、やかましい車の音がした。
車の音は、背後で私を通り越してすぐに止んだ。
やがて若い男性が何人か騒ぎながら砂浜に下りてきているようだった。
100mほど向こう。私は内心、ドキドキした。(からまれたりしたら、どうしよう)
やたらに陽気な騒ぎ声を気にしながら、私はじっとしていた。

競走しよう!という声が聞こえたと思ったら、一人の男が駆けてきて、私のそばで止まった。
全力疾走したらしい男は、膝に手をついて肩で荒い息をついていた。
私は上目遣いでその様子を見ていたのだが、ふと、男がこちらを向いた。
目が合う。
夜目にも分かるほど、男は驚愕の表情に変わった。
意味不明の叫び声をあげながら、近付いてきた時と同じく猛ダッシュで離れていき、向こうで大声で話し声がしたと思ったら、けたたましい車の音はどんどん遠くへ。

ほどなく、静寂が戻った。

想像なのだが、あの男は私を見て“見てはいけないモノ”と勘違いしたのではないだろうか。
あの時、私はちょうど股の所に懐中電灯を置いて単行本を照らしていた。
白い紙に反射して、私の顔がぼんやり浮かんで見えたのではないだろうか。

夜の砂浜に浮かぶ一つの顔。
怖い。
まさかそんなところで夜、独り読書してる奴がいるとは思わないだろう。


あの砂浜で幽霊話が語り継がれているのか非常に興味深いが、残念ながら確かめたことはない。

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