“ウリウリ”を登って~“スポーツ”と“冒険”の間。
今年に入って不動岩東稜にある“ウリウリ5.11d”というルートにトライし始め、先日ようやくRPできた。
このルートにトライしていて、いろいろ感じたことがあるので、書いてみようと思う。
“ウリウリ”に関するウワサは、とにかく良くない。恐らく、過去の事故の影響が少なからずあるのだろう。
昔はよく登られていたルートだったようで、人気ルート100の7位に選ばれたりしたようだが、最近はあまりトライしている人はいないようだ。
私もトライは今になってようやく、である。まあぶっちゃけ、RPできそうな課題が近所になくなったんで、やってみっか、てな具合だった。
丁度今回のパートナーも同じ思いだったみたいで、タイミング的にはラッキーだった。
やってみて分かったのだが、まずピン間隔が遠い。そして要所にも関わらずプロテクションがハーケンだったりする。
上部に核心があり、その手前のプロテクションがハーケン。次のプロテクションはボルトだが、クリップ体勢がバランシーで非常に怖い。クリップ時、(もし墜ちたら…前のピンはハーケンやし…)なんて思いが脳裏をよぎり、また、目の前でヌンチャクがプラプラ揺れとるもんやから、クリップできずにヌンチャクを掴んでしまう、なんてこともあった。
さて、誘惑に負けないで無事クリップできても、その後に核心ムーブが待っている。
パートナーはムーブをこなした後、上のカチを保持してからクリップしていたが、私はムーブの途中で、下からクリップすることを選んだ。その時の左足はスメアで、(ああ、滑ったらどーしよー)と思いながらのクリップになる。勿論、A0(ヌンチャク掴み)の誘惑も健在だ。
じゃあ核心後にクリップすればええやんか、と思うかもしれない。実は最初は私もそうだった。が、確か5便目でそのクリップ時に手繰り落ちし、左腕をしこたまぶつけて酷い打撲傷を負ったのである。それ以来、怖くなって下からクリップに変更したのである。
さてさて、無事クリップし、核心ムーブをこなした後も、まだ楽はできない。そんなに持ちやすくないホールドでの数手。そしてプロテクションは再びハーケン(リングボルトやったかな?)である。
今のフリークライミングの感覚だと、ハーケンしかないとこ=滅多に落ちないとこ=簡単に登れるとこ、である。ので、最初はガバを探しまくった。でもなかった。
ひょっとしたら我々の見つけられなかった“秘密のミラクルガバ”的なホールドが存在するのかもしれない。
厄介な数手をこなすと、ようやくガバ。ここのプロテクションもハーケンだが、この上はガバだけなので大丈夫。実質終了で、少し登ると終了点である。
現在、“フリークライミング”という言葉は、ほぼ、“スポートクライミング”と同義で使われているように思われる。言い回しは色々あるけど、要は“フリー”は“スポーツ”で安全だ、と、(極論になるけど)そういう風潮である。
リードできるジムが増え、ジムからフリークライミングを始める人も多いと思う。私もそうだ。
また、最近開拓された岩場は、昔からの岩場に比べてピン間隔が短く、だいぶ安全に配慮されているように思える。
数年前に、Hさんが開拓されたT市の某岩場はジム並みのピン間隔で、本当に有難い。
会の初心者練習でよく使わせていただいている。
しかし、忘れてはいけない。フリークライミングは元々スポーツではない。
アブミ等の登攀器具を使わないで、己の体だけで登るクライミングのことである。
元来アルパインクライミングから移行してきたことを思えば、“冒険的要素”があって当たり前、だと考えられる。
冒険的要素が強いルートとして、私が真っ先に思い当たるのが、駒形岩の“斜陽5.9”である。
以前、斜陽をトライして怪我をする人が多いことから、ピンを打ち足す話があったように思う。
私も骨折した方1人、捻挫した方1人を見たことがあるので、打ち足すのに賛成だった。
しかし、結局ピンは打ち足されることはなかった。私は
この現状維持の考えにも賛成である。
なんやねんチョリオ、“コウモリ”みたいなヤツやな、と思われるやろうけど、実際私はどちらの考えも正しい、と思う。
怪我人が出るのは困るし、5.9やねんからもうちょい安全にしたろ、という考えは正しいと思うし、ちゃんと考えて登ればそこが危ないというのはすぐ気付くし、そもそも5.9が簡単だと思い込むのが間違いだ、という考えも正しいと思うのである。
ずいぶん脱線してしまった。“ウリウリ”の話だった。
上記の通り、ウリウリは現在のフリールートとは異なる冒険的要素の強い課題なのだが、その極めつけが出だしにある。
現在は工業用(?)ボルトが2ピン打ち足され、かなり安全になっているが、本来の1ピン目は今の3ピン目、非常に高い位置にある。
今の感覚だったら、これほど高い位置に1ピン目があるのは、かなり簡単に登れるから、と考えてしまうが、なかなかバランシーでクリップ体勢もビミョーである。
もしクリップミスをして墜ちれば、ビレイヤー位置で0ピンを取っていたとしてもかなりの大怪我、死んでもおかしくない。
昔のクライマーはこれをこなしていたのか、と思うとその強心臓ぶりには全く感服する。
正直に言うと、RPした直後の今現在なら、100回の内99回、大丈夫だと思う。それぐらいの自信はある。
しかし、言い換えれば、100回に1回は死ぬかもしれないのである。当に命がけ、冒険、である。
今時、命がけなんて流行らない。と思う。しかし、フリーソロというスタイルもある。
半年程前に、アレックス・ホノルドによってヨセミテの5.12d(だったか?)のルートがフリーソロで登られた、と話題になり、絶賛されていた。もしこれが普通にロープを結んでのクライミングなら、話題にならなかったと思う。
また、ボルダリングでも、ノーマットでのトライにこだわる人がいると聞く。
つまるところ、クライミングはやっぱり“自己満足”なんやな、と思う。
もちろん、他人の評価を第一義と考えている人もいるだろう。そのために、ほんとは登れてないのに、登れた!とウソをつく人もいるらしい。しかし、自分は騙せないし、そんなことして楽しいのか、と思ってしまう。
イヤ、そんなことを書くんじゃなかった、そうそう、自己満足。
このスタイルで登ってみたいから登る。
別に他人にどうこう言われるのではなく、自分がやってみたいから。
マスターにこだわる人もいるだろうし、チョンボ棒を使ってでも登りたい、という人もいる。
ハングドッグは潔くないという考えの人もいるだろうし、一時間ぶら下がって壁を触りまくってる人もいる。
私は、どれも間違いではないと思う。(混んでる時の壁の独占は良くないが)
自分のやりたい、登りたいスタイルで登れば、それでいいと思う。
その、色んなスタイルがある、というのが、クライミングの魅力の一つだと思う。
RPできたら、今度はマスタースタイルでトライ。次はあのガバを使わない、限定で、という風に。
おおらかな考え方やと、道楽でやっているんだから、楽しかったらそれでええんちゃうん、と。
もちろん、プロのクライマーはそれではアカンやろうし、ルールやマナーは守るべきである。
今回、ウリウリをトライして、先達のクライマーの息吹を少し感じることができたと思う。
楽しかった。いいルートだな、と思えた。
“タイコ”や“ワンマンショー”もいいルートだ。
ますます不動岩が好きになった。
なんか書きたいことが多くて、まとまりのない文章になってしまった…ごめんなさい。
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コメント
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そんなルートだったんですね(^-^;
それを雪の日にRP。
やはり、偉大な先輩です。
でも大事にならなくて良かったです!これからもクライミング楽しまないと、ですからね!
投稿: むら | 2018年1月30日 (火) 22時13分
むらくん、コメントありがとう!
そういや、むらくんと行った立岩も、なかなか冒険的岩場やったな。あん時もロングフォールしたっけ…
投稿: チョリオ | 2018年1月31日 (水) 21時32分