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2016年11月18日 (金)

“緊張コントロール”~クライミングのこと。8

ずいぶん前に、書きかけたブログがあった。
すっかり忘れていたが、本日めでたく発掘された。
では、どうぞ。


以前、ブログで私がクライミングをする前、どうイメージをしているかを書いた。

http://cholio.cocolog-nifty.com/blog/2016/10/post-6f6c.html

今回はその続き、のようなもの。

前回、登る前は、気持ちの持ちようを“真ん中”に、“水”が流れるイメージで。と書いた。
なんかエラそうだが、その通りだ。あっている。
が、所謂“本気トライ”の時はどうだろうか。

“水”のイメージは良いとして、気持ちを“真ん中”に、は残念ながら無理である。
大抵、頭の中は(絶対、登ってやる!)が充満している。
かくしてそれは、緊張を呼び、呼吸は浅くなり、体は硬くなり、あまり良い事ではないことは解っている。

だが私の場合、こういう時の方が、逆に良い結果を得られることもある。
多少身体の動きが犠牲になるが、得体の知れない“火事場のクソ力”みたいなのが湧いてくるのである。
きっと脳内にはエンドルフィンやらドーパミンが分泌されているに違いない。
ただし、こういうクライミングの後は大抵、体のどこかが痛くなる。
まあ脳内麻薬は放っておいても勝手に分泌されるので、そのことはとりあえずおいておく。
しかし“緊張”は、なるべくなら避けたいところである。

たぶん、誰でも経験はあると思うが、度の過ぎた緊張は本当に嫌なものである。
(登れなかったらどうしよう)(今すぐに雨でも降ってくれないかな)(ハラ痛くなってきた、もう止めようか)
なんで楽しいハズのクライミングで、こんな苦しまないといけないのか、と思う。


私は去年まで、あるオーケストラの団員だった。
そのオーケストラには、20年以上在籍していた。演奏会は年3回。
本番は緊張した。ソロなんかがあると、本当に逃げ出したくなることもあった。
しかし、何度も続けているうちに、だいぶ緊張は和らいできた。
仕舞いには舞台の上で寝てしまう、なんてこともあった。しかも2度…
寝てしまうなんてのは緊張がなさ過ぎて、逆に良くないことなのだが、緊張も慣れればマシになる、ということを学んだ。

では、クライミングにおいて、緊張をなくすには。
私は最初の頃、緊張しないために色んなものを読み、実践してみた。
深呼吸する。少量の水分を補給する。
しかし、緊張はする。違う方法を試す。やはり緊張する。

“緊張”はなくならない。
それが分かった。

考え方を変えた。緊張はするもの。緊張に慣れよう、と。
“敢えて、緊張するシチュエーションで登る”。これに限る。
(チョリオなら、11aは登れて当たり前)そんな空気の中で登る。
(まさか、10台では墜ちないだろう)こういうのもある。
登れそうもないルートで動画を撮ってもらう、ってのもいい。
無様に墜ちる姿を見てもらい、後で自分で見直して屈辱を味わう。一石二鳥である。
なんだか少々“M”的ではあるが…

ちなみに少し脱線するが、登れない時の動画は貴重である。
後で登れた時の動画も撮ってもらい、比べて見てみると、すごく参考になる。
登れた時の姿を見て改善するのは難しいが、登れない時の姿を見ると、どこが悪いのかが分かりやすい。


前にも書いたが、“強さ”とは、自分が出来ることがどれだけ、ということではないと思う。
出来ないこと、苦手なことを、“弱さ”を自分がどれだけ認識するか、ということだと思う。
人にはプライドというものがあり、なるべく弱い所を他人に見せたくない、というのが人情なのだが、弱点を練習しないと、クライミングは上達しない。
また、苦手な箇所が、普段登れるのに、人に見られると登れない、というのは、登れないと同じ。
それならいっそ、最初から曝け出して登っている方がいい。

以前は、敢えてビレイの下手な奴と組んで、自分の最高グレードにトライもしたが、あまりに危険なので今はしない。
2回グランドフォールしたし…そもそも、その彼も最近ジムに来なくなった。


今の山岳会に入会した当初、折り返しビレイの検定があった。
私は、当時の代表と会長に挟まれ、見つめられる中での検定で、ものすごく緊張した覚えがある。
頭に血が昇り、安環を閉め忘れるという致命的なミスを犯した。
終わった後で、(ああ、いつもできてたのに…)と思ったが、いやいや、とすぐに思い返した。

考えてみれば、剣や穂高にアルパインに出かけた時は、必ずオンサイトトライである。
事前にグレードが分かっているにせよ、緊張は必ずする。
緊張してたからできませんでした、ではダメなのである。
むしろ、最高のプレッシャーの中で、検定を受けられたことに感謝すべきなのである。
そして、いつもできても、緊張したらできない、ということを知り、本番じゃなくて良かったね、と、まあそういうことなのである。


自分の最高グレード更新がかかっている時。
高難度ルートでOSを狙っている時。
遠くて次にいつ来られるか分からない岩場でのクライミング。
自分だけ成果が出ないでいる時。
または、あの人の前では墜ちたくない、イイところを見せたい、なんて時もあるだろう。
そういった“緊張”をプラスに変えることのできる人も、世の中にはいるらしい。
しかし、私を含め、私の周りには、どうやらそんな人はいない。

みんな“緊張”の中で登り、そしてそれを突破してゴールした瞬間に溢れる喜び、達成感、安堵感。
みんな、それを求めてクライミングをしているのではないだろうか?

その瞬間の笑顔は、本当に素晴らしい。


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今年の2月、不動正面で“タイコ5.11c”をRPした山秀さん。

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同じく3月、“ワンマンショー5.11d”RPのヨッシー。

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同、“小熊物語5.11d”RPのイサミン。

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同、“タイコ5.11c”RP、アキトくん。

みんなええ顔や。

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