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2015年12月10日 (木)

自分の名前。

昨日の新聞に書いてあった、日韓関係についての記事を読んでいて、ふと思い出したことがあった。

私の名前は「允哲」で、ヨミは「ユンチョル」である。
日本人ではなく、韓国人である。
所謂、在日韓国人、というやつで、日本で生まれ育ったので、韓国語は殆ど話せず、使える言語は大阪弁のみである。

通常、在日韓国人は、日本名(通名)を持ち、そちらを使うので、韓国人とはわからない。
だだ、私の祖父は韓国人として誇りをもっていたらしく、父もその教えを引き継いだため、代々通名は持たなかった。

子どもの頃は「ユンチョル」という名が嫌だった。
だいたい、名前に小さい「ヨ」が入っているなんてヘンだし、近所の友達にからかわれたりもした。
しかし、大きくなってからは、人に自分の名前を他人に説明する時以外、特に困ったことはない。

さて、私が大学に在学中、両親の勧めで、韓国ソウルの語学堂という所へ留学したことがあった。
母国なのだが、ほぼ外国で心細いのだが、向こう側もそれは承知、日本語の使える者同士でクラス分けされていた。
クラスメートは日本人、もしくは在日韓国人ばかりだった。

クラスメートにMさんという女性がいた。真面目な日本人。
私と同じ年で、すぐに友達になれた。

ある時、作文の授業があった。
韓国語で作文を書いて、発表するのである。

Mさんの発表。
彼女は何か意を決したかのように立ち上がり、明らかに緊張しながら作文を読み始めた。
彼女の真剣さはすぐに教室中に伝わり、皆も静かに、真剣に聞いた。
読み進むにつれ、彼女は涙を流し、時折詰まりながらも、きれいな韓国語で最後まで読み上げた。
クラスメートと先生は彼女に拍手し、Mさんは涙を流しながらも、吹っ切れたような笑みを浮かべていた。

Mさんの作文の内容は、「自分が日本人ではなく、韓国人である」という告白だった。

私は皆につられて拍手していたが、内心ポカンとしていた。
(それがどうしたん?)という気持ちだったのである。
と同時に、韓国人である、ということを「告白」するのに、そんなに気合を入れないといけないのか、ということに驚いていた。

授業の後、Mさんは私に言った。
実は今日、自分が韓国人って言えたのは、私のおかげだと。
私が韓国人だということを全然隠しもしないで堂々と生きているのを見て、自分も決心がついたんだと。
本当にありがとう!と。

私は、そうやったんか、そりゃ良かった。とか何とか答えたけれど、内心は
(へえ、そうですか)だった。

堂々と生きていたかは別にして、私は自分が韓国人であることを隠すことはできない。
通名がないのだから。(当時成人していたので、自分でつけることはできたが)
自分の国籍で悩まずに済んだのは、通名を持たなかった両親のおかげだろう。

日本人から見れば、小さな「ヨ」が入っている、へんちくりんな名前だけど、
今では結構、気に入っている。そらもう、長い付き合いやし。

ただ、「允」の字な、あれ電話とかで他人に伝えるのは、かなり大変やねん…

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