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2011年4月 1日 (金)

大普賢岳 2011年3月8日

大普賢岳は思い出深い山である。
2000年1月30日、初めての雪山で登った山だ。
もう11年も前。その山に、お礼の気持ちで今回、義弟のサクライと登ることにした。

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11年前。とてもじゃないが雪山へ向かうようには見えない。車は懐かしのワゴンRだ。

前日の7日夜、サクライと合流、王将でメシを食っていた。
「サクライ、前の大普賢作戦、憶えているか」
「ハッ、憶えておりまする。」
「どんなだった」
「…まあ…あまりしんどくなかったかと…」
「うん。確かにな。オレもそんなに苦労した憶えはない。ただ、今回はキツいかもしれん」
今年は雪が多いこと、昨日今日新雪が積もっていること、それが今までの硬い雪に積もっていること。
「念のためにこれを着けておけ」
彼に長短のスリング2本とカラビナ2枚を渡した。

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行く途中。雪が降っている。

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和佐又ヒュッテへいく林道でチェーンを巻く。

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11年前。同じチェーンを使っている…もう交換しないと。

「押せぇ!サクライィ!」
「イケません!推進力低下!」
「出力全開、取り舵!」
「ダメです…どうしても…左のわだちに…」
オレとサクライは登山をする前から大変な目に遭っていた。
アトレー号はもっさり積もった雪を乗り越えることができない。
サクライを降ろして押してもらうもチェーンが火花を散らすばかりでタイヤは空転し、どうしても前へ進めない。
「しゃあない。ここらで駐車して寝よ」
我々は和佐又ヒュッテまで車で上るのを諦め、車中で仮眠をとった。

8日、4時半起床、朝食・準備を済ませて5時32分、出発。
和佐又ヒュッテには10分程で着いた。
しばらく歩いて6時11分、和佐又のコルに到着、少し休憩。

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出発。

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和佐又山付近。

6時58分、シタンノ窟を通過し、日本岳の険しい岩壁の脇をトラバースして進む。
朝日窟で休憩を入れて、笙の窟に着いたのが7時42分。ここまでは順調である。

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シタンノ窟より先のトラバース。

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朝日窟にて。

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笙ノ窟にて。

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11年前、笙ノ窟での二人。サクライはオレのカメラと三脚を持たされている。

笙ノ窟を過ぎると、積雪量がぐっと増した。
ハシゴも出てくる。いや、ハシゴが埋まっていなくてラッキーだった。

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サクライは久々のラッセル。楽しいか?

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日本岳のコル到着8時15分。この辺りから霧氷が出始めた。

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11年前、恐らく日本岳のコル付近。

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11年前、この時のカメラはニコンF3、マニュアルカメラだ。面倒すぎて今では考えられない。

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高度を上げていくにつれ、積雪量がさらに増してくる。
石ノ鼻到着8時34分。見晴らしの良い所だが、ガスで展望はなかった。

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小普賢岳を越え、大普賢岳とのコルに下り立ったのが9時23分。
ガスに覆われた大普賢岳が我々の眼前に迫る。
なかなかの迫力である。さあ、ここからが本番、
「行くぞ、サクライ!」
「ハッ!」

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我々の眼前に立ちはだかる大普賢岳。

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(どうもおかしい…)
たまにあったピンク色の目印テープを長いこと見ていない。
(それにトラバースが長すぎる)
基本的に尾根づたいのはずなのだが、なかなか尾根へ上がれない。
(戻るか…)
いや、あそこから登れそうだ。そこをトラバースしてあそこを登ろう。

・・・これはもう、これまでに幾度となく失敗してきたことである。
“間違えたと気付いたら戻る”
この鉄則を知っていながらまた同じ過ちを犯してしまった。

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やはりルートミスだった。

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事前に渡しておいたカラビナとスリングが役に立った。

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尾根へ直登。

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サクライ、はよ登ってこい。

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キツイっス!

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頂上はまだ遠い…

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尾根へ到達。小普賢岳を振り返る。向こうには青空が…!

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ラッセルはまだまだ続く。

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「こっからお前トップな」「押忍!」

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「…」

「報告します!前方に看板らしきもの、発見!」
「GPS確認中…頂上まで直線距離、約50!」
11時47分、オレとサクライは大普賢岳の頂上を踏んだ。

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登頂!抱き合って健闘をたたえ合った。

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サクライ、喜びの舞い。

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オレも負けていられない。

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サクライにバンダナショットを撮ってもらった。

登頂後、記念撮影を済ませ、テントを張った。
ツェルト代わりに雪山にいつも持ってきているソロ・テントだ。
中に入ってコンロに火を点けるとすごく暖かい。
湯を沸かして昼食のカップラーメンを食べる。
やはり雪山で食べるカップラーメンは格別にうまい。
実を言うと、今回、もし楽に登頂できたら国見岳〜七曜岳の周回コースを行ってみようと考えていた。
2週間ほど前に行った山上ヶ岳〜稲村ヶ岳がわりと簡単に行けたからである。
しかし、無論、そんな気はなくなっていた。
“もう、お腹いっぱい、ごっつぁんです”てな案配である。

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テントを張って…

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中で休憩。

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雪山の山頂でのラーメンはいつも格別。

しばらくすると明るくなってきた。
外に出ると青空が広がっている。
周囲の山々が見える。
二人で雪の大峰の、大展望を愉しむ。
サクライは大普賢岳は2度目だ。2000年以来である。
前回はガスで展望がなかったので、今回初めて。感動しきりである。
オレも雪山の展望は随分、見慣れてはいるものの、やはり二人して苦労して登った分、感動は大きかった。

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晴れてきた!

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奥駆道の先、弥山・八経方面。

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見事な霧氷の斜面。

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やはり霧氷には青空。

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11年前。積雪量が全然違う。

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イワタニのガスコンロと飯盒を使っている。

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この時のカップヌードルは…心底うまかった。

たっぷり1時間半以上頂上を堪能し、13時28分下山開始。

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「コレ、なんの足跡っスかね?」「こらお前、やっぱり、く、くまさんちゃうか…」

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「ああ〜!イイっス!」

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下りはルートミスしないように慎重に…埋まってるし。

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慎重に…埋まってるし。

ハシゴや鎖はことごとく雪で埋まっていた。
ここでもカラビナとスリングが大いに役立った。

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いやぁ、手強いっス。

下っていくと、登る時にルートミスをした箇所に出た。
大きな岩がある所だった。我々はその岩の右側をトラバースして進んだのだが、
本当は左側の雪の急斜面を登るのが正解だった。
「ああ、コレを登れば良かったんか。しかし分かりにくいな」
右側のトラバースは“いかにも登山道”という感じである。
「こんな分かりにくい箇所なら目印があるはずだが…」
よく探すと、やはり目印はあった。
ピンク色のテープが木に巻き付いて霧氷に覆われていた。
「ああ、ここにあったんスね、気付きませんでした…」
“キャッサバー・アイ”を持つ、視力に絶対の自信有りのサクライはしきりに悔しがっていた。
彼は最近、視力が落ちたと嘆いている。
「ほんで今の視力なんぼなん?」
「1.5っス」
「…十分やん」
「いやぁ、見えにくいっス」
なんにせよ、今回のルートミスはもちろん、私のせいである。
目印が見えにくかったもなにも、目印に頼っていること自体、まだまだ甘いということである。
無事に通過できてよかった。

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小普賢岳との鞍部に到着。大普賢岳を望む。登る時に比べると、ずいぶん穏やかな表情に見えた。

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小普賢岳を登り返した直後。これがけっこうキツかった。

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霧氷もそろそろ見納め。

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石ノ鼻15時32分。登りの時とは違い、景色が見渡せた。

この先、もう難所はない。日本岳のコル15時52分、笙ノ窟16時10分。
ゆったりとした気分で下山した。
特にシタンの窟を過ぎてからは雪も深くない。
辺りはブナの大木。風はなく、気温も少し涼しいくらい。
夕暮れの中、なんとなくノスタルジックな、言いようのない良い雰囲気。
下りてしまうのがもったいないような気分だった。
サクライも似たような気分だったのだろう。
我々は急ぐことなく、いや、さらにゆったりと下った。

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夕暮れの中、ゆっくり下った。

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「コレ、何スかね?」「え?ええっ!こらお前、く、くまさんの爪跡ちゃうか」
「登る時はなかったっスよね」「…そうだね」

和佐又のコル17時03分。

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和佐又ヒュッテ付近より。大普賢岳が少し見えた。感謝の気持ちでそれを眺めた。

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すっかり暮れて、いい雰囲気。

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見覚えのある巨木。

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無事下山。17時47分。

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いつものラーメン屋で夕食。疲れた…

今回の大普賢岳は本格的な雪山だった。
トレースもなく、雪も多かった。
11年前の時は、積雪量が少なく、ルートも分かりやすく
“登らせてもらった”登山だったと、今にして思う。
前回、今回と目一杯楽しませてくれてありがとう、大普賢さん。

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コメント

大普賢岳ソロでスバシで登山口まで必死で登ったの思い出すな
頂上に行くまでのときにオロクになった方への追悼の看板はまだあるのかな
それをこえてなんか蟻のとわたりみたいな崖にへばりつくような道でしかも氷で足元がつるつる担ってたのを思い出した
あのときはアイゼンなんていらないと精神力だけで行ってたけど鎖なかったら死ねてたなw

君もサクライも元気そうで何よりです

みけねこさん、こんばんは。
>頂上に行くまでのときにオロクになった方への追悼の看板はまだあるのかな

小普賢岳のとこに確かあったと思うけど、今回見なかった。雪に埋まってたかな?

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