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2010年5月30日 (日)

涸沢岳〜北穂高岳縦走(3) 10年5月21日〜23日

 穂高岳山荘でたっぷり一時間休憩。準備を終え、10時8分。さあ、いよいよ核心の穂高縦走!いざ、出発!

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 小屋からまず、涸沢岳の登りである。夏道は飛騨側で、雪がなく、岩が露出していた。アイゼンを脱いで登る。10時36分、なんなく涸沢岳頂上に到着。ずっと夏道を歩いたので当たり前である。それでもやはりピークは嬉しい。今回初めての山頂である。しかも、ひょっとしたら最後のピークになるかもしれない、と記念撮影を撮っておく。

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涸沢岳山頂で記念撮影。

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槍をバックに。

 ところで、当初の予定していた奥穂高岳の往復は中止した。天候が昼から悪くなるようである。穂高岳山荘に到着した時には、すでに青空がほとんど見えなくなっていた。雨(雪)は降らないにしても、風が出たら厄介である。それに残雪期の穂高稜線は我々にとって未知の領域である。時間があるに越したことはない。

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チョッパーさん。現場のオッサンやな。

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左奥から、槍ヶ岳・南岳・大キレット・北穂高岳(南峰)

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目指す双耳峰の北穂高岳。

 涸沢岳山頂から先、いきなり難所である。下りの鎖が途中から雪に埋もれている。進路を探すが、夏道通りにロープで確保して進むのが無難、と判断。まずアイゼンを着け、チョッパーさんが支点確保、オレが最初に懸垂下降気味に下りる。足下の安定した所でアックスビレイを取り、チョッパーさんが下りてきた。たった20mほどの難所だったが、これをクリアするだけでも結構時間を要してしまった。

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涸沢岳からしばらくは夏道通りだったが…

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すぐに難所にブチ当たる。

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アイゼンを着けるチョッパーさん。チョッパーさんの右側、雪の急斜面を下った。

 D沢のコルに下り、しばらく夏道を進むも、またしても積雪に阻まれる。今度は雪を行かず、岩稜を選ぶ。誰も通らないところなので浮き石だらけである。石を落とさないように、がセオリーだが、はっきり言って無理。距離を十分開けて岩を落としながら進んだ。

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夏道でない岩稜は浮石だらけ。

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慎重に進みマス。

 最低コルに到着したのが13時頃であった。涸沢岳を出て2時間以上かかっている。夏道を普通に歩くのに比べ、倍以上要している。オレの中では想定内であるが、それにしてもここまで歩きにくいとは…また今年は例年に比べ、雪が多いらしい。それも時間がかかる要因である。

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岩と雪のミックスルートのため、何度もアイゼンを着け外しした。

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いや〜、しんどいっス…

 危なっかしい岩稜と、雪との格闘が続いた。もう何度アイゼンを着け外ししただろう。オレはまた疲労してきた。すぐに息が上がってしまう。(おかしい…)睡眠不足がたたっているのか。チョッパーさんはオレより全然元気だが、なんとなく顔がこわばっている。なかなか進めず、時間がかかっているので緊張しているのか?その点ではオレに不安はない。この時期、日は長いし、もし進めなくて引き返す時間はある。そしてなんといっても、オレのザックにはテントが入っている。(大丈夫やから、チョッパーさん。まあ、楽しもうや…)オレの心の声は、まあ、届いてないわな…

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厳しい道が続く。涸沢から見上げた時は、ほんのちょっとの距離に思えたんやがなぁ…

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たぶん、この辺りが最低コル。

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最低コル辺りから滝谷。

 楽しむどころではなかった。こういう登山の時、だいたいオレの心は7割がワクワク、3割が不安なのだが、この時のオレは不安が6割占めていた。(どうしたというのか…)身体が重い。そもそも今回は、誰も歩かない所を行く、というのが目的だった。夏道は以前歩いているし、まあ、天気がよくて油断さえしなければ、だいたい誰もが歩けるようになっている。今更夏道なんて…と当初は思っていたが、この期に及んで、もうそんなことはどうでもよくなっていた。岩のコブをよじ登る。そしてそれを越えて先を見る時、(カモン!夏道!夏道大歓迎!!)とか思ってたし。

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ルートを探すチョッパーさん。

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北穂もだいぶ近づいてきた。

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 どうも足がおかしい。その時、頭の中で思っている所と違う場所に、足が動いた。オレは転び、左膝を岩にぶつけた。(なんとマヌケな…)幸い大事故にはならなかった。逆に滑落しても大丈夫な箇所だったので、油断してしまっていたのかも知れない。それにしても、これまでにはあり得なかったことだ。左足を曲げ伸ばししてみる。痛い…腰に続いて足も痛めてしまった。

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南峰の登り。

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さすがのチョッパーさんにも疲れが…

 しかし、それでも、我々は着実に北穂高岳へと進んでいた。顕著なピークに立ち、GPSで確かめると、北穂高岳南峰。あと少しだ。すぐ隣の峰は雪に覆われていた。足跡が見える。あれが北峰、ゴール、のはずだが…標識がない。不安が高まる。北穂の南峰と北峰の間は指呼の間なのだが、かなりの難所である。当初からかなりの苦戦が予想されていた。(GPSが間違えているはずない)が、不安は消えない。(北峰であってくれ…!)大きな岩を巻いて雪の上を進む。

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気の抜けないルート…

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こりゃいったいどうやって越えるんや?

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 コルに出た。(ああ…!)たくさんの足跡が見え、その足跡はずっと涸沢に下りていた。(これは登山者の)振り返ると、見覚えのある岩、今巻いてきた岩は、以前それを目指して登ったことのある…松涛岩だった。ここは松涛のコル、前方は間違いなく、北穂の北峰であった。

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来た道を振り返る。左奥が奥穂、その右が涸沢岳。

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見覚えのある標識。

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デカい岩を巻く。実はこの岩が松涛岩だった。

 力が抜けた。背中の方でブツンと何かが切れた。後から来たチョッパーさんに説明をした。その時のオレの顔が余程ヌケていたのだろう、後日(あの時のチョリオさんの顔と来たら)と笑い話のネタにされた。しかし、説明している時、チョッパーさんの顔が徐々に緩んでいくのも、かなり面白かった。

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北穂(北峰)到着!標識は雪の下だった。

 かくして、ゆるゆる顔のオッサン二人は無事、北穂高岳の頂上に立った。オレは感極まり、雄叫びを上げたが、隣にチョッパーさんがいるのが少し恥ずかしく、いつもより控えめだった。固い握手をし、写真を撮りあい、景色を眺め、十分山頂を堪能した後、小屋へ入った。

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オッサン二人、ゆるゆる顔。

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コメント

休憩が休憩にならない山行を初めて経験した。稜線は風が強く当然休憩場所としては避けたが、これが精神的疲労を増した。ルートとなる稜線の向こうがどうなっているか、気になって気になって、たまらない。敗退なら早い方がいーし...。チョリオ君は「19時まで歩けますやん。」という変態的感覚で、正常な私とは違う。それでも、15時半に北穂に着いた時は嬉しかったですねー。(笑)それに滝谷、あそこは良かった。今日も滝谷に触発されて、外岩に出掛けてしまった。「やったるでー!」(笑)

チョッパーさん、どーも!!

>チョリオ君は「19時まで歩けますやん。」という変態的感覚で、
わっはっは。すまん、すまん。
でも、いつもより随分トバしたんやで。
ノロくてごめんなさいね。

>15時半に北穂に着いた時は嬉しかったですねー。
ほんま、嬉しかったですね!チョッパーさん、最高にええ顔してました。吼えたらよかったのに(笑)

>今日も滝谷に触発されて、外岩に出掛けてしまった。「やったるでー!」
おお!?やってますね!またクライミング、行きましょうね!

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