燕岳・大天井岳 単独(4)09年11月21日〜24日
11月23日・3日目
目が覚めた。(あ…寝過ごしたな…)なんだかやけに明るい。時計を見ると8時だった。テントのファスナーを開けると窓から青空が見えていた。(ウソ…?)寝ぼけながらのろのろとテントから這いだし、外に出てみた。快晴。風もほとんど、なし。笑ってしまう程の、快晴だった。(マジで?)昨晩の不安がバカらしく思えるのと同時に、朝日を見逃したことを後悔した。ケータイで目覚ましをセットしていたのだが、無意識のうちに消してしまったらしい。いや、普段なら山では目覚ましがなくても日の出前に目を覚ますのだが。まあ、ええや。だいぶ疲れてたんやろ。んじゃ、出発!
小屋の窓から見えた青空。だいぶ寝ぼけてる…
大天荘の冬季小屋前。
準備を済ませて9時22分、大天荘冬季小屋を出た。いきなりイイ感じのシュカブラ。撮影。小屋から大天井岳頂上はすぐなのだが、撮影ばかりしていて1時間程掛かってしまった。
大天荘を振り返る。
10時15分、再び大天井岳山頂。昨日とうって変わって快晴。全方位の大絶景!「うおぉ〜〜〜〜〜〜〜!」声の限り、息の続く限りに叫んだ。(ありがとう、山の神サマ、本当にありがとう!)悪天だと思っていただけにこの青空はすごく嬉しかった。全く夢のようだ。ようやくザックを降ろし、煙草に火を付け、心をなだめる。(どうどう。まあ、時間はたっぷりある、落ち着いて落ち着いて。)まず、昨日取り損ねたバンダナショットを撮った。そういえばデジカメは昨日小屋に入ってから正常に戻っている。どうも寒さがイカンようだ。風は相変わらず強いが昨日ほどではない。絶景に目が慣れた頃、カメラを出して撮影。西側、大迫力の穂高、槍を写す。北側、今から歩く稜線を眺める。はるか向こうに燕山荘が見える。その向こうには憧れの鹿島槍ヶ岳も見えた。その槍ヶ岳と燕岳の間、西側から北側にかけて、白い夥しい数の連山がある。鷲羽岳やら水晶岳といった雲ノ平周辺の山々だ。まだ足を踏み入れたことのない、憧れの地である。コーヒーを沸かして飲み、もう一服した後、頂上を後にした。
いろいろ撮ってみた。
大天井岳より燕岳方面。これから歩く稜線。
碧天の元、気分は悪かろうはずはない。ただ、身体はかなり疲労していた。(時間はたっぷりある、ゆっくり、じっくり)今回はなぜかよく鼻水が出、鼻が詰まった。詰まると口で息をするが、そうすると喉が痛くなってくる。鼻が詰まる度に手鼻をかんだ。これがなかなか、難しい。勢いよく出した鼻水がスパッツに付いたり、靴に付いたり。以前韓国に留学していた折、手鼻をかむ人をよく見かけたが、実に上手かった。タン壺にちゃんと命中させていた。ハッとする程キレイな女性がいきなり手鼻をかむのには唖然とさせられたものだが…
半袖です。
左奥、立山。
大天井岳と槍ヶ岳をバックに。
14時前、ようやく大下りの頭に着いた。大天井岳側から行くと大登りである。大きく肩で息をする。随分時間がかかったが、ここからはアップダウンも減り、楽になる。燕山荘もだいぶ近くに見える。振り返ると大天井岳。この時期、日没はかなり早く、16時半頃である。すでにだいぶ日が傾いている。
尾根の東側は風がないが、日陰で雪も多い。
爽やかな青空にダケカンバが映える。
14時半、蛙岩をくぐって通過。どこが“蛙”なのか、何故“げえろ”と読むのか、そんなことはまあどうでもいい。15時40分に無事、燕山荘へ戻ってきた。
蛙岩通過中。
燕山荘に帰ってきた。
ザックを降ろし、受付を済ませ、すぐに撮影へ。三連休は今日までなので、今晩泊まる登山客は少ない。山は静かだった。快晴は続いていた。空には雲一つない。夕陽の赤みがかった景色。かじかんで指先が痛いのを我慢しながら、じっくり山を見つめ、景色を切り取っていった。いや、写真はあまり撮らなかった。なんとなく、気分が乗らない。夕陽が笠ヶ岳辺りに沈んだ。山が急に冷たい表情を見せる。オレの気分もなんだか冷めていた。岩に腰を落ち着け、タバコに火を点けた。静かだ。槍ヶ岳を見る。何か、“存在”を感じる。静かな山に、独りで居る時にたまに感じる。槍のおやっさん、ひさしぶり…心の中で話しかける(よう、来たの)ああ、また、来たで…目を瞑った。指先は相変わらず痛い。しかしもうだいぶ慣れた。辺りは静まりかえっている。今は風もない。無音。遠くの方で、キーンという、硬質な、金属的な冷たい音がする。自分の呼吸する音が聞こえる。自分の心臓の音が、やけに大きく聞こえてくる。目を開けた。空の紅は殆どなくなり、槍ヶ岳は冷たくなっていた。オレは一度、大きく息を吸い込み、吐きだした後、槍に背を向け、小屋へ戻った。
燕山荘に戻ると猛烈にいい香りが漂っていた。(いや、今日は残ったお菓子を…)「すいません、夕食って今からでも頼めます?」(!!)「いけますよ」いやあ、さすがナンバーワン山小屋だ。今日の夕食は好物のエビフライと魚の煮付け、ほか諸々。たいへん、美味しかった。
空がまだ少し明るいうちに夜景を写す。バックは富士山。(クリックすると大きくなります。)
夕食の後、一服のために外に出る。相変わらずの快晴。星が綺麗だ。最後の夜、今夜はまた、心ゆくまで星空を堪能しよう。
右上にオリオン座。これくらいはオレでも分かる。
月光に照らされる燕岳と星。月が沈んでから写した写真の方が星は綺麗だが、燕岳がほとんど写らない。
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コメント
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苦労した後には
素晴らしいご褒美がありましたねぇ( ^ω^)おっおっおっ
小説を読むようで、わくわくしながらで読みました。
投稿: kosizi | 2009年12月 9日 (水) 15時06分
kosiziさん、こんばんは。
>苦労した後には素晴らしいご褒美がありましたねぇ
ええ、ホント。山からの素敵なプレゼントでした。
>小説を読むようで、わくわくしながらで読みました。
ありがとうございます。なんか恥ずかしいな…
投稿: チョリオ | 2009年12月 9日 (水) 19時03分
すごい。チョリオさんの写真、本職ですか?
事前準備・・・体重管理だけはクリアできそう(涙)
投稿: あっこ | 2009年12月22日 (火) 04時38分
あっこさん、せっかくコメント頂いていたのに
遅くなってごめんなさい。
>チョリオさんの写真、本職ですか?
ははは、お世辞でも嬉しいです。
この時はお天気に恵まれたので、
気に入った写真がたくさん撮れました。
山に感謝です。
>事前準備・・・体重管理だけはクリアできそう(涙)
準備も結構楽しんでやっています。
いっぱい考えて、今の自分ができる限りの準備をしておくと、
山で失敗しても後悔しませんし。
投稿: チョリオ | 2010年1月 3日 (日) 07時10分