ムスコと奄美大島へクワガタ採集へ行ってきた。
本当はここ何年か毎年行っている“クワガタパラダイス”の壱岐島にいく予定だったが、天気予報が最悪だったので奄美大島に変更したのである。
はじめにムスコから「奄美大島どう?」と言われた時、実は私はあんまり乗り気ではなかった。
2月に沖縄に行ったし、私の中では(奄美大島は沖縄の劣化版)みたいなイメージだったのだ。
で、ちょっとネットで調べてみると…
アマミヒラタやアマミノコギリ、スジブトヒラタというカッコいいクワガタが“普通種”で、採集も比較的簡単とのこと。
更にはコクワガタ、ミヤマクワガタも亜種、更に更にシカクワガタ、マルバネクワガタ、ルイスツノヒョウタンクワガタといったレアキャラにも運が良ければ?会えるかも、とある。
まあ、初めて行くんやし、あんまり数の少ないクワガタは難しいやろうけど、アマミヒラタ・アマミノコギリ・スジブトヒラタの3種類は捕まえてみたい。
最初は見れるだけで満足、とか思ってたけど、いろいろ調べているうちに(こんくらいのん取れへんかな…)とか欲がでてくる。
そこでムスコと話をしてざっくり目標を決めた。
スジブトヒラタ=60mm
アマミヒラタ=65mm
アマミノコギリ=70mm
右も左も分からんのになかなか高望みやな、思う。
しかも2泊3日だけど滞在時間はたった46時間しかないのである。
それでも初めての奄美大島、親子とも期待に胸を膨らませて、いざ出発!
13時、奄美空港に着いたら何やら黒い雲。天気予報は晴れだったが、ここにきて私の“雨男”が発動したのか。
レンタカーを借りてすぐに土砂降りになった。14時。
…なんてこった…
雨が降って木が濡れると樹液が流されてしまう。クワガタもいなくなってしまうのである。
雨はスコールですぐに止んだがかなり濡れてしまった。
雨降りの弊害として、木を揺すってクワガタを落とす方法があるのだが、それが濡れた木だと水音だか落ちた虫の音だかが分からなくなる。そもそも本人がビショ濡れになってしまうのである。
そんなわけで、車窓から見る南国の雰囲気に我慢できない親子は「ちょっとあのタブ、見てみよう」とか言っては木を揺すってみてビショ濡れになって車に戻る、なんてことを繰り返していた。
いろんな景色や動植物に目移りしながらも最初の予定通りに進める。
そういえばいきなり“リュウキュウアカショウビン”を見ることができた。
低い柵の上に止まっていなのだが、あまりに派手な赤で、人工の置物と見間違えた。
https://youtube.com/shorts/-JsNr1tB0xY?si=kH8K8FbxiHLRPc3n
また、何か黒い小動物が急な斜面を上がって行くのを見たけど、あれは恐らくレアキャラの“アマミノクロウサギ”やったんちゃうかな。
さて。気持ちは昂ぶっているけれど、まだクワガタを見ていない。
奄美大島では珍しいのだが、ミカン畑でクワガタが取れるらしい。だからミカン農家さんに声を掛けて(畑に入らせてください)とお願いするのである。
明るいうちにいっぱい畑を回ってポイントを増やしておこう、というのが我々の作戦である。
ミカン農家の方々はみなさん親切だった。
(入っていいけどココにはいないよ〜)とか
(ああ、ハブに気をつけなよ〜)とか優しく話してくださった。
何件か回ったが、クワガタは取れなかった。
少し焦ってきた。日が長いとはいえ、もう少ししたら農家の方々は帰ってしまう。
これは!というポイントを抑えておきたい。
17時、しかしついにその時はきた。
1本のミカンの木、私の目に、デカいクワガタの姿が飛び込んできた。
見た瞬間、一気に興奮したが、とりあえず逃げられる洞とかもないし、捕まえずに置いておいて、ありったけの大声でムスコの名前を呼んだ。
叫びながらクワガタを見る。アマミヒラタだ。60mmは絶対越えてる。か、カッコいい〜!!
遠くでクワガタを探していたムスコが息を切らせてやってきた。
私の指差す方を向き(おお…)と漏らした後に私を見る。
我々は抱き合って「やった〜!!」と叫んでいた。嬉し過ぎて泣きそうなった。あんまり情を露わにしないムスコもかなり興奮している様子だった。無理もない。このクワガタはカッコ良すぎた。
改めて計ってみると65mmだった。いきなりアマミヒラタの目標達成である。
ちなみに言うと、“65mm”というサイズは特別大きなサイズではない。
“長さ”で言うと今回行きそびれた壱岐島のイキヒラタはもう70mm以上が当たり前で65mmだとムスコも既に興味を示さないくらい。
同じヒラタクワガタでもこのイキヒラタは細長く、アゴも長く、シュッとしていてカッコいい。反面、ちょっと弱々しいイメージもある。実際挟まれてもあまり痛くない。
我々が一番馴染みのある“本土ヒラタ”は65mmはかなり大物である。アゴが短く、身体が太く、ずんぐりむっくり。“野武士”のようなイメージ。挟む力は強力で挟まれたら涙が出るくらい痛い。
そして今回の“アマミヒラタ”。65mmは多分ちょっと大きめくらいのサイズだと思う。しかしその見た目は非常に凶暴な感じ。アゴが太くて下に湾曲している。内歯がアゴの真ん中くらいまで上がっていてそのアゴを大きく開いて威嚇している。
もう自分から「オレ、喧嘩強いで」言うてる感じである。
多分見慣れたらやっぱり本土ヒラタが一番カッコいいな、思うんやろうけど、こんな異国感たっぷりのクワガタを自分達の手で捕まえられたのが本当に嬉しかった。
畑の主はまだいらっしゃったので、お礼と夜も入らせていただく約束をしておく。
もうすぐ夜がやってくる。
我々親子の、長い長い夜だ。
20時。真っ暗ではないがもうほとんど暗い。
ミカン畑採集も少しは慣れてきた。
またアマミヒラタの60mmを捕まえ、念願のスジブトヒラタも捕まえることができた。
https://youtube.com/shorts/vx3PAKuxg0w?si=-V-B_iw4unlWZk7H
“スジブトヒラタ”は名前の通り背中に特徴的な筋があるクワガタである。
オスもメスもその模様がとてもカッコいい。
10年ほど前、クワガタ採集をムスコと始めた頃、飼育にも少しハマっていた。
幼少の頃の夢を大人になって果たす、というよくあることだが、海外のカブトムシやクワガタを通販で買っては愛でていた。
その時にたしかスジブトヒラタも買って育てた覚えがある。
鎧をまとったような外見とは裏腹に、性格は温厚で大人しく、樹液場ではアマミヒラタによくやられているらしい。
21時。アマミシリケンイモリ、なんかデカいカエル、デカいナナフシ、サソリモドキ。
そしてついにアノ生物、ハブと対面した。
ミカンの木の上でとぐろを巻いているのをムスコが見つけた。
ムスコは「2匹おるで」といっていたが、とぐろが2つに分かれているだけで、1匹のハブだった。
ゆうに2メートルは越えてるように見えた。かなり大きい。あんなんに噛まれたら、と思うと本当に恐ろしい。本土のマムシなんて比べもんにならない。
https://youtube.com/shorts/tb4XAoeVzzE?si=C85rZeMRc4J-JLJt
10時頃、ようやくアマミノコギリを捕まえた。ただしかなりちっこくてカワイイやつ。もっとカッコいいやつを捕まえたい。
ムスコがアマミシカクワガタを見つけた。
こいつは捕まえてはダメなやつで見るだけ。
見た感じコクワかスジクワみたい、ムスコは喜んでいたが、私はあんまり感動しなかった。
https://youtube.com/shorts/aa3SsoKSy-E?si=y9fN429tLPTGzlqW
2時、念願である大きいスジブトヒラタを捕まえた。58mm。いやあ、シブい。目標サイズには少し足りないけれど、それでもとてもカッコいい。
この後も頑張って採集を続ける。かなり眠いし、頭もぼ〜っとしてきた。運転の時はかなり意識して集中した。
しかし5時、ついにダウン。なにかの展望公園で車中泊、着いてすぐに寝た。
翌朝、8時に目が覚める。まだまだ寝たりないがすでに炎天下で、車がホカホカになってる。
この日は島の南の方へ移動してまたポイント探し。
お昼過ぎにはムスコも目を覚まし、ポイントを探す。
死骸がいっぱい落ちている木もあったり、なかなか期待できる。また、アマミノコギリの大きな死骸もあった。
アマミノコギリだけ、まだ大物を見ていない。
私はかなりの寝不足で途中で何度か仮眠をさせてもらった。
夕刻から夜へ。
しかし期待とは裏腹にクワガタは全然いなかった。
この日は雨も降らなかったし、すごく蒸し暑くて、いかにもクワガタが出てきそうな感じだったのに。
期待していた2箇所目も空振り、いっぱい死骸の落ちていた3箇所目もやっぱりダメだった。
ここで私の気持ちが切れてしまった。
もう朝方までゆっくり寝てからにしよう、そうムスコに提案した。
というのも、死骸がいっぱい落ちていたミカン畑のおじさんか、(クワガタは朝方が一番取れるよ、朝にまたおいで)と言っていたのが私の頭にずっと引っかかっていたのだった。
私はかなり眠いので適当な所で車を停めてそのまま眠った。
ムスコは、すぐには眠れなかったようだが夜中には寝ただろう。
朝の5時、目が覚める。助手席でムスコは眠っている。ちょっと声を掛けたけど全然起きない。
とりあえず一人でポイントに行ってみる。
やっぱり全然いない。次もダメ。そしてあの死骸いっぱいポイント。
おばさんはすでに起きて水をやっていた。挨拶をして畑に入らせていただく。やっぱり…いない…なんで?
おばさんは「いなかった?ごめんね」と別に悪くないのに申し訳なさそうされていた。いや、こちらこそなんかすいません。
しばらくしてムスコも起きる。早朝のポイント巡り。クワガタは全然いなかった。2人でがっかりしたけど、ま、仕方ない。
https://youtube.com/shorts/HY-RYCnH4rk?si=t49OCENcEA8z-KTe
島の北の方に戻る。ムスコに最後くらいなんか名物を食べようか、と提案。奄美大島は“鶏飯”というのが名物らしい。
ムスコが“みなとや”という店を見つけて行ってみた。開店30分前に着いたけど、すでに一組待っていて2番目。
けっこう待ってようやく入店。鶏飯はめっちゃ美味かった。というか奄美大島に来て初めてまともなご飯。
多分何食べても美味しかった思う。食後、レンタカーを返して空港へ。13時45分発の飛行機で大阪へと帰った。
3時過ぎに関空に着き、天王寺に着くのが5時頃になるので、ムスコに(お腹空いてる?夕食も一緒に食べよか)と提案。
天王寺で奮発してうな重を食べに行った。私が外食でうなぎを食べるのは初めて。でもなんか滋養に良さそうやったので。
そしてムスコにちょっと悪いことしたな、というのもあった。
別に謝ることでもないんやけど、今回私は自分の体力を過信していた。
気合と根性で二晩くらい半徹夜くらいイケルやろ、と考えていたけど全然ダメやった。
たしかに1日目はかなり頑張ったし成果もあった。あの後にもっと寝ておくべきやった。2日目は疲れ過ぎて夜もすぐに寝てしまった。3日目は早起きしたけど、もう帰る日なのでそんなに採集はできない。
できれば頑張って2日目の晩に北の方にに戻って、1日目に取れたポイントをまた巡ってみたら良かったのでは…
もう過ぎたことで無理なのだが、それをしていれば2日目も成果を挙げられたかもしれない。ま、しゃあないんやけど。
ムスコは元々無口であんまり話をしてくれない。
うなぎを食べながら、「奄美大島、楽しかったな」「うん」くらいのやり取りしかしない。
「またいつか行きたいな」「うん」
「今度はアマミノコギリの大歯、取りたいな」「あのアマミヒラタはカッコ良かったな」「ハブ、めっちゃ怖かったな」
今回は本当にかけ足で巡ったけれど、次はもうちょっとゆとりと計画性をもって来たい。
初めての奄美大島、かけ足やったけど濃密ですごく楽しかった。そしてまたムスコとの思い出がひとつ増えた。